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05 07(月)
カクレカラクリ:森博嗣
[ 二次元的行間之隙間:Book]
メディアファクトリー (2006/08)
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森博嗣氏の初映像化作品。というより、最初から映像化を前提に書かれた作品。ゲーム化(F)やマンガ化(F、女王シリーズ)、ラジオドラマ化はあったけれど、映像化はこれが初、というのはやや意外だ。2006年夏にテレビドラマとして公開されているらしいが、残念ながらこれは見ていない。セルビデオ化はしていないので、今となっては見ることはできない(ウェブページだけは残っている)。
主人公は「古いものマニア」の大学生2人、郡司朋成と栗城洋輔。錆びた鉄骨や朽ち果てたコンクリートに愛着を感じる、というのは、昨今の廃墟マニアに通じる(本作でも、彼らが地方の廃工場に出かけるところからはじまる)。彼らの同級生で、実は名家のお嬢様の真知花梨、その妹の元気娘・真知玲奈、玲奈の下僕(?)の山添太一の計四人がストーリィの中心だ。ちなみに、玲奈はいつもコカ・コーラのボトルを首から提げている。他のメンバも、ことあるごとにコカ・コーラを口にする。絶対にペプシ・コーラをのんだりしない(ましてやドクタ・ペッパを飲むはずがない)。なぜならこの作品はコカ・コーラ120周年のタイアップなのであって、タイアップとはそういうものだからだ。
さて、映像化前提ということもあって、ミステリ色は比較的抑え気味なのが本作品。ミステリファンには、逆に物足りなさを感じるかもしれない。謎の類はわかりやすいものであるし、人が死んだりもしない。図形トリックなどは、テレビだと一瞬なので分かりにくいかもしれないが、書籍でじっくり見れば、すぐに謎が解けてしまうような程度だ。
ストーリーは、花梨の実家である田舎にある、「120年後に姿をあらわす」と予言された、天才絡繰り師が造った「カクレカラクリ」と、多分それに付随してるんじゃないかなー、ぐらいに思われている財宝を巡る宝探しだ。「120年間見つからない」「120年後に動作する」「なんのために120年寝かせているのか」ということを手がかりに、主人公たちはいろいろと推理を巡らし、真相に近づいていく。花梨・玲奈の真知家と、山添家との間にある確執、絡繰り師の子孫である磯貝先生、それぞれの思惑と秘密が絡み合い、田舎の夏の日差しの中、物語は展開する。ああ、もちろん、120年なのは、コカ・コーラが120周年だからだ。
夏の日差しが照りつける田舎の夏、森、社、石灯籠、廃工場といった情景は、まるで課題図書になるようなイメージだ(ちょっと登場人物が老けているが)。表札や看板にまで掛詞(謎かけ)を多用する村、という設定は面白かったが、途中で設定を忘れたのか登場人物の視界に入らなくなったのか、中盤以降はついぞ出てこなくなった。テレビドラマではどのように活かされていたのだろうか。
タイアップ・メディアミックスという条件下でぱぱっとこれだけのものを書いてしまう森氏もスゴイが、まあ、練り込み不足な気はしないでもない。森氏には、たまに、そういう作品がある。それはそれで味がある、実験的作品であることも多いのだが。
投稿者 ogre : 2007年5月 7日 00:25
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