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03 14(水)
スクレイリングの樹:マイクル・ムアコック
[ 二次元的行間之隙間:Book]
早川書房 (2007/01)
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エルリック・サーガの後期三部作(ウルリック・サーガとも呼ばれる)の2巻目で、前作「夢盗人の娘」の直接的な続編になる。第二次大戦が終了した後のヨーロッパに暮らす、エルリックの分身の一人であるウルリックと、その妻でエルリックの娘であるウーナの、壮年カップルが活躍する。前作に輪をかけて、エルリックの立場はかなりあやふやだ(笑)
(以下、ネタバレを含む)
ナチスばっこする戦時中を舞台にした前作だったが、今回は早々にウルリックが拉致され、ウーナはそれを追って異界に飛び込む。近代以前のアメリカ大陸(もしくはそれを彷彿とさせる異界で)インディアンと共にマンモスの背に乗って旅をし、エルリックは千年に渡る〈夢の旅〉の途中、十字軍に参加したり修道女と寝たりしながら、ヴァイキングと共に海を渡る。
〈エターナル・チャンピオン〉の中でも最も情けない分身であろうウルリックは、ただただ翻弄されながら過酷な宿命に挑む。
三者の一人称によって語られる物語は、この〈多元世界〉の顕現である〈スクレイリングの樹〉、そして〈天秤〉を守る戦いの場にて集結する。
前作からの引き続き、おなじみの敵役もしかりだが、今回もおっと思わせるゲストキャラが登場する。新三部作とはいえ、オリジナルのエルリック・サーガもおさらいしておく必要があるだろう。
全般的に象徴的な表現で書かれており、中盤以降はその傾向がより強くなる。時系列も位置関係も把握しにくく、物語、ヒロイック・ファンタジーとして気軽に楽しめる体裁ではない。はっきり言って難解だ(元々エルリックは難しいのだが)。今回も読むのにだいぶ時間がかかってしまった。
この物語に登場するエルリックは、実際には、ジャグリーン・ラーンの船の桁にぶら下がっているのだそうだ。そういう話が可能ならば今後も何でもアリではないか(笑)。まあ、サーガなんて、そんなものかもしれないが。
投稿者 ogre : 2007年3月14日 23:00
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