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2006
04 23(日)

わたしが・棄てた・女

[ 二次元的行間之隙間:Book]

わたしが・棄てた・女
遠藤 周作
講談社 (1972/12)
売り上げランキング: 28,976

講談社の100冊に選ばれたせいか、最近どこの本屋さんに行っても平台や特集台に置かれている。たまには古い作品も読まないと、ライトノベルばっかりでもあるまいと思って読んでみた。

…遠藤周作という作家には、なんとなく、しとしと降り続ける雨のイメージがあるのだけれど、この作品もじめじめとした雨と、それにまつわるカビやドブの臭いとが混じってくるような雰囲気がある。文章を通じてそんな雰囲気を醸し出せる(カビだけに)、ということ自体がスゴイ作家性なのだと思うけれど。

戦後の混乱が開け始めた頃から高度経済成長にさしかかるあたりまでの時代背景は、ちょうど昔の日活映画を観ているような雰囲気がある。(セリフ回しとかに。)

もともと新聞連載だったというからか、序盤と終盤でなんとなく雰囲気が違ってきているのだが、もしかすると背景となる時代の移り変わりが登場人物や背景に書き込まれているせいなのかもしれない。

主人公が「聖女だ」と云う「ミッちゃん」は、果たして端から見ていると、占い師が看破したように、どうしようもないお人好しであるだけのように見える。とはいえ、とんでもないお人好しこそが、打算や憐れみを抜きにして、真実他人のために行動することができるのかもしれない。作者は、語り部ではない「ミッちゃん」の内面までもあえて描写することで、彼女が心底のお人好しであることを強調した。逆に言えば、打算や憐れみから生まれる行動の先には聖者たる資格はないことを表現したかったのかもしれない。

投稿者 ogre : 2006年4月23日 22:48



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