« 衣更|メイン|だからなんなんだ »

2004
06 06(日)

過去形の呪い

[ 五次元的思考之蒙昧:Diary]

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
せっぱ詰まって駅やデパートのトイレに駆け込むと、こんな張り紙に出会うことがある。 「きれいに使っていただき、ありがとうございます。」 当然、男子トイレしか見たことがないので、女子トイレに同じような張り紙があるのかは不明。 これは非常に深い表現だ。 「きれいにお使い下さい」 とか 「汚さないでください」 ではない。 「きれいに使っていただき、ありがとうございます。」 である。 「使っていただき、」 既に完了形である。 この張り紙は、既に我々が「きれいに使う」コトを前提にしているのだ。 きれいに使わなかったらどうなるのか? そんなことは恐ろしくて考えられない。なにしろ「きれいに使う」ことは既に決定していることであり、完了した行為なのだ。 すなわち、それを破ることは因果律に反する。 タイム・パラドックスだ。 いつの間にか、我々は因果の流れの中だ。 まあ、それは言い過ぎとしても。(←言い過ぎです。) あらかじめ決まっているように言われると、それは己の行動を縛られるような感じがするのである。 一種の「のろい」のような言葉だ。 陰陽師的に「呪(しゅ)」と言ってもいい。 人間、「しなければならない」「あらねばならない」と言われると「なんでぇこの、偉そうに」と思ってしまうものである。 それを 「きれいに使っていただき、ありがとうございます。」 などと言われると 「いやいや、どういたしまして。」 という感じできれいに使いたくなってしまうのだ。(まあ、汚くするつもりもないんだけど。) 一種のプチ洗脳とも言える。 なかなか上手い手法と言わざるを得ない。 だから、昔あったこんなセリフ、 「お前は虎だ!虎になるのだ!」 というのは間違っているのであって、 「お前は虎だ!虎なんだ!虎だったら虎なんだよ!」 と言わないといけないのである。 「虎になるのだ!」 なんて甘っちょろいことを言っていると、 「あー、まだ虎じゃないんだー」 なんて甘えに繋がってしまうに違いない。 似たような例は他にも見受けられる。 「お前は犬だ!」 なんて言われると、「犬なのかも知れないなぁ」と思ってしまうに違いない。(言われたことないけど。) (応用編として「お前は薄汚いブタよ、このデブ!」「その日まではウジ虫だ! 地球上で最下等の生命体だ 」などが挙げられる。) さて、それはそれとして。(なんだと!?) 過去形で言われると嫌なことも世の中にある。 先日、某アメリカ系航空会社の便に乗ったところ、フライト前のアナウンスが英語のアナウンスに続いて日本語であったのだが、ひとしきり喋ったあとに、 「本日は○○エアラインをお選び頂き、ありがとうございました。」 と来た。 「ございました」? なんかもう、フライトは終わりましたといわんばかりのその言い方。 まあ、そりゃ、お選びしたのは過去の話なんだけど。 なんかもう、このフライトが終わったあとにかける言葉はねぇぞ的なその言い方。フライトが終わる事なんてないんだよとでも言いたげなその言葉。 なんか、そんな、不安を覚えてしまったのであった。 なので、各航 空会社の客席乗務員の方々は気をつけてアナウンスして欲しいものであるのだ。 冒頭に戻る。

投稿者 ogre : 2004年6月 6日 00:00



トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.the5thdimension.jp/cgi-bin/mt/mt-my-mod_12_track_back_ogre.cgi/4

コメントする