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2009
02 14(土)

時間はどこで生まれるのか :橋元 淳一郎

[ 二次元的行間之隙間:Book]

時間はどこで生まれるのか (集英社新書)
橋元 淳一郎
集英社
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「数式をひとつ入れるごとに本の売りゆきが半分になる」というのは、スティーヴン・ホーキンスが友人の談として語ったことだが、この著者はそれを念頭に置いたものか、がんばって数式無しでいろいろ説明しようとしている。まあ、数式もグラフも、難解であることには違いはあるまい。ましてや、空間を横軸・時間を縦軸に取ったグラフ、など、理解しやすいものであるかどうか……。
「相対論のような現代物理学を下敷きにした哲学が存在しない」ことに業を煮やした著者が、その呼び水となろうと書いた、という本書なのだが、当然、そんなことはないのであって、「相対論 哲学」でググればいろいろ出てくる。アリストテレスよりGoogleが先、でも困ったものだが、それぐらい調べてもバチは当たるまい。

とまあ、とっかかりからしてアレなのだが、相対論と量子論、量子的時間論の一般を説明したところでエントロピーに話を広げ、エントロピーの増大を反転させようとする動きを「意志」と見なす。
ところが、ミクロな、量子論的エントロピーの話を扱っていたはずが、それを進化や生命のようなマクロな構造に転写してみたり、そもそもエントロピーが「増えている」と見なす価値基準を「主観」に求めてしまったり(じゃあそのエントロピーを減らそうとするのは誰?)、なんだか意味がわからないところも出てくる。そもそも、エントロピーを熱力学の立場で捉えているのか、情報論的立場で言っているのか?まあ、同じっちゃぁ同じなんだろうけど、さ……。
結局、「絶対時間」はないのはいいとして、「主観時間」を生じさせているものはナニカ、ということが言いたいのか、時間の矢の向きについて言いたいのか、それもよくわからないなあ。それに、「主観」というのをある程度以上自明のものとして扱っているし。

筆者はSF関係の会にも入っていらっしゃるようだが、「逆時間を生きる生命はあり得ない。なぜなら黙っていてもエントロピーが減少するからだ」などという。SF的に美味しいところだと思うんだが、まあ、本書はSFじゃない、ってことかな?

それにしても、全体量の1/4〜1/3が付録、ってゆーのもすごいことだな。しかもその内容が、「ミンコフスキー空間」「波束の収束」「多次元平行宇宙」「タイムマシン」「宇宙のエントロピー」って具合で、そこを(本文で)上手いこと説明できなかったら意味ないだろう、的な(笑)。しかも、その内容が微妙に間違っている。「宇宙の最初は無秩序だったが、小さかったからエントロピーが小さかった」とかって、ナンカチガウ。もちろん、宇宙の最初は平坦だったのだ。平坦な宇宙にどうして揺らぎが生まれ、エントロピーが増大するのか、が、むしろ問題なのだ。
とか……

投稿者 ogre : 2009年2月14日 23:52



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