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2008
09 29(月)

スピリチュアルワールド見聞記:植木 不等式

[ 二次元的行間之隙間:Book]

スピリチュアルワールド見聞記
植木 不等式
楽工社
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最近流行のスピリチュアルなワールドについて、と学会員でもある植木氏が淡々と語る。案内役がツンデレツインテール巨乳メイド服の天使?なのはともかくとして(笑)、この本は、タイトルの通り至って真面目な(の割にはダジャレが多いな……)「見聞記」だ。見聞しただけの記録であるからして、何かスピリチュアルについての新しい知見だとか、文献研究の結果見えてきた真実だとか、そういうものはあまりない。ほとんどない。多分、ない?

スピリチュアルというと、霊のパワーだったりご先祖様がついていたり死んだら地獄に堕ちるわよ!とかだったり、一言で括ってしまえば魂の実在と死後生の存在を大前提に置く考え方だ。魂とか死後の世界があるから、あるからにはちょろっと通信ができたりする。地獄に堕ちるのは怖いから占いをして正しい(と思われる)事をする。人生、楽しみは尽きないものであるが、死後生があるなら人生に限りはないわけで、なるほど、めでたしめでたくもなし、といったところか。

本書は、その「魂」と「死後生」について、幽体離脱現象の研究をはじめとした現代科学の文脈かでジャブ(シャブではない)を打った後は、近代スピリチュアリズム(心霊主義)の歴史を長々と紐解いて、現代に至るスピリチュアリズムの系譜を明らかにすることで「スピリチュアリズムとはなにか」「魂や死後生は、いかにして信じられてきたか(いるか)」を提示していく。飄々とした語り口で、それを否定も肯定もしないところはさすがだが、つまり、本書が論文や評論ではない、という意味でもある。言うのは好き嫌いとか、納得いくかどうか、といった軽い主観だ。判断は読者に委ねられて、もいない。この本を読んで、それらを判断することはできない。あくまでスピリチュアルの根底には何があるのか(あってきたのか)ということをよく理解することに目的がある。そうなれば、信じるにしろ信じないにしろ、世のスピリチュアルなものをより「楽しむ」嚆矢となるだろう。

幅が広く、発散している感じがするが、それでも三大宗教へのインタビューはわずかだし、2000年前から近代までのリンクは、あまりなされていない。宗教での死後観を語るには、今日日はイスラムを入れなければいけないだろう。また、巧妙というか、語るまでもないという判断なのか、近現代の新興・新新興宗教の類には殆ど触れていない。近代のスピリチュアル思想は、知的階級の友愛組織や文芸的交流組織であったことが多い(オカルト思想にしても、さしたる宗教的信条があるわけでもなかったのだから)。だからその辺は書くことができている。

ギャグや分かりにくいネタがちりばめられていてそれなりに濃いのだが、内容的には、そんなカンジだ。

投稿者 ogre : 2008年9月29日 23:51



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