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10 06(土)
封印作品の謎―ウルトラセブンからブラック・ジャックまで:安藤 健二
[ 二次元的行間之隙間:Book]
大和書房 (2007/05)
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世にあまたあり、時に週刊誌などでも話題になる「封印作品」、そのうち比較的有名な(巷間に昇ることが多い)作品を中心に、その「封印」された理由を取材していくルポルタージュの文庫化だ。取り上げられている作品は、表題にもなっている「ウルトラセブン」、「ブラックジャック」の他、これも有名な「怪奇大作戦」、「ノストラダムスの大予言」(映画)、そして作者が封印作品の謎を追い求める端緒となった「O-157予防ゲーム」。どれかはどこかで聞いたことがある人も多いに違いない。それぞれが様々な「噂」で知られている。ちょっとウェブを検索しただけでも膨大なページがヒットするだろう(「ウルトラセブン 封印」でGoogleにかけると、53,600件出てくる)。
それらのHPや評論系の本でも、これらの封印作品、及びその理由についてはいろいろ語られている。語り手の中には大物のマニアや古参のファンも少なくない。しかし、基本的にはどれも「噂」であり、それなり頷けはするものの、どこかでこう思うのだ。「たったそれだけのことで封印?そしてそれが今でも……?」作者も、おそらくは同じ思いを抱いたのだろう。この本では、その噂の中にある真実を暴くべく、関係者を取材していく。関係者が亡くなっていたり行方不明だったり、それ以上に厳しい取材拒否の壁に遮られながらも作者は諦めずに取材をしていく。
残念ながら、土壇場で都合のいい密告や「関係資料の入手」といった自体があるでもなく、取材の過程はとにかく作者の「孤軍奮闘」といった色彩が濃い。そして残念ながら、その戦いが報われることは多くはない……。
マンガやアニメといった業界は、戦後、あるいは高度経済成長以降に猛烈に発達した突然変異だ。故にその生誕期・成長期にはかなりの無茶があり、ねじれがあり、封印すべき闇が発生したのだろう。封印は単に差別問題やクレームによるものではない。たとえそれが端緒だったとしても、それが生じ、大きなインパクトを与えたのは、本当にそのマンガやアニメが差別を助長するような表現をしていたから、ではない。この本を読むことで、輝かしい経済と文化の発展の裏にある闇が、子どもたち(と大きなお友達に)夢と希望を与える筈のマンガやアニメにも影を落としてことを、重く感じることができるだろう。
投稿者 ogre : 2007年10月 6日 22:47
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