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2007
01 29(月)

マルドゥック・ベロシティ:沖方 丁

[ 二次元的行間之隙間:Book]

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉
早川書房
冲方 丁(著)
発売日:2006-11
おすすめ度:4.5
マルドゥック・ヴェロシティ 2
早川書房
冲方 丁(著)
発売日:2006-11-15
おすすめ度:4.0
マルドゥック・ヴェロシティ 3
早川書房
冲方 丁(著)
発売日:2006-11-22
おすすめ度:3.5
Amazy

マルドゥック・スクランブルの続編にして、前作の前日譚。ボイルド=前作の敵役の物語。成長途上の金色のネズミ=ウフコックとパートナーの物語。そして09(オー・ナイン)が作られたいきさつと、今はいないメンバーと、オクトーバー社側の09に連なるストーリー。

散文調で/や=といった記号を多用する、かなり特徴的な文体は好みが分かれるところだろう。しかしなかなかいい味を出している。ボイルドの視点を中心に語られる際は優秀な軍人の観察・分析的視点を的確に再現し、それ以外でのシーンは疾駆する物語のリズムを演出している。

この作品は、前作の主人公(のうちの一匹)であったウフコックの元パートナー、ボイルドの物語。前作では「ウフコックを濫用したためにパートナーを解消した」ことが簡単に語られているだけで、詳しいいきさつは語られていない(ウフコックも語らなかったし、○○も聞こうとはしなかった)。しかし、偏執的ともいえるウフコックへの執着、64口径を振り回す怪物じみたキャラクターが印象的だった。ルーン・バロット+ウフコックのタッグと、無言で弾丸を交わすボイルド。そこに至る仲間との日々。なぜボイルドはああなってしまったのか?
この物語はマルドゥック風・ダース・ベーダー物語、だ。既に前作を読んだ我々は、ボイルドが行き着く先を知っている。ボイルドが、ウフコックとその新たなパートナーを向こうに回して戦い、そしてどうなったかを知っている。それでもなお、我々はボイルドの物語に目を奪われる。その悲しい結末を宿命付けられた物語から目を離すことができない。圧倒的な力を持った(それ故に09として活動している)メンバーが裏切られ、罠に嵌り、命を落としていくシーンから目を離すことができない。全てはボイルドという兵士の結末に向かって……。

ボイルドはルーン・バロットとウフコックに敗れ去る。それこそ全身ボロボロになって散る。これは前作から予言されていたことだ。
そしてこの物語の最後に、読者は、戦士が放つ最後の弾丸を見る。
人を捨て、
個を捨てて、
しかし、
なおかつ、
唯一無二のパートナーを追い求めた、
狂気の戦士が放つ鎮魂の弾丸を。

投稿者 ogre : 2007年1月29日 00:11



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