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10 05(木)
また「あるある」にダマされた。:鷺一雄
[ 二次元的行間之隙間:Book]
表紙には「大事典」と文字が挟まっているけど、正規のタイトルにはナシ。大人の事情が伺える。
さて、そんな本書はその通り「あるある大事典」の批判本。ネットやら週刊誌やらあちこちで叩かれている番組なのでもっと批判本があるかと思いきや、意外と少ないのがこの国の実像か。もっとも、批判的意見を見たい場合はネットでそういった情報にリーチできるし(この本もネット出身)、批判に耳をふさぐ人は本だって買わない。出版業界としても商売になりにくいのだろう。
この本は、番組で取り上げられた内容(低インシュリンダイエットやらにがりダイエットやら)ごとに、疑問点・問題点・危険な点を指摘していく。ただまあ、相手が詐欺師か疑似科学の分野に属するものだけに結構苦労しているようだ。一般向けの本を目指したため、あまり科学科学した反証は慎んでいる向きがある。そのために一部の反証が非論理的になっていることもある。たとえば何度も適用されるパターンとしてこのようなものがある。
「調査したところ、およそ○○(8割とか90%といった言葉が入る)の人々に××(セルライトがあるとか血がドロドロだとか)であることが分かりました、という(「あるある」の)主張がある。しかし、ほとんどの人が××であるならそれが正常なのではないか?」
著者の文意としては「それは正常なことなので問題ない(対処する必要はない)」ということなのだろう。しかしもちろん、それが問題ないかどうかは科学的な見地から判断されるべきであって多数決で決められるものではない。こういう論理を持ち出すと、結局は疑似科学と同じ過ちを犯すことになるのではないか。批判する側こそ冷静な対処が求められることを意識して欲しい。
そういう一部を除けば、全体としては読みやすく構成されているし、わかりやすい。個人的には対象を減らしてでももうちょっとつっこんだ論議をして欲しかったが、あまりやりすぎると普通の読者にソッポを向かれてしまうだろう(科学の本には「数式が一つ入るごとに売り上げが半分になる」というジョークもあるし…)。学術用語もとにかく減らしてある。「二重盲検法」ぐらい使ってもいいんじゃないかなぁ(やっぱり売り上げが半分になるのだろうか)。本文の下部にかなり広い目地があるんだけど、ココに解説を入れるつもりだったのかな…。専門?用語が使っていないので、慣れている読み手には却って読みにくいかもしれない。
しかしまあ、こういう内容を突き詰めていくと「痩せたきゃカロリー制限して運動しろ!」「バランスの良い食事と規則正しい生活で健康を!」「楽してナントカしようなんて思うなボケェ!」ということになってしまうので、やっぱり本としては売れないのかも(笑)。
正しいことを言う者が迫害され、耳に心地よい真実ならざることを語る者が讃えられる…。教育制度改革をやるときには、まず、こういうところからちゃんとしてほしいものだ。
投稿者 ogre : 2006年10月 5日 00:24
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本が売れない今日この頃、「あるある」によって発生した「流行のダイエット情報」に、出版社も便乗しているのが実情だからねぇ・・・
イヤな「もちつもたれつ」ではありますな。
しかし「規則正しい生活」を営める人が、世のなかの働き人にどのくらいいることやら。