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2006
03 14(火)

涼宮ハルヒの消失:谷川流

[ 二次元的行間之隙間:Book]

涼宮ハルヒの消失
涼宮ハルヒの消失
posted with amazlet on 06.03.14
谷川 流 いとう のいぢ
角川書店 (2004/07)
売り上げランキング: 3,268

一巻以来の「ハルヒ」シリーズのレビュー。「涼宮ハルヒの消失」、シリーズ4冊目。

デビュー作の1巻(「〜の憂鬱」)のあと、文化祭での自主映画騒動を描いた「溜息」、1巻と2巻の間にあった事、としてまとめられた短編集「退屈」と続いて、今度はまた長編。今回のハルヒは一体どんな無茶をやらかすのか−と思っていると「消失」です。このタイトルにしてこの内容あり。(逆か?)いくらなんでもありのライトノベルとはいえ、いきなり世界観のちゃぶ台返しに出るとは、語り部の「キョン」君ならずともあっけに取られてしまうところです。

(以下、若干のネタバレ含みます。)

というわけで、今巻は冒頭にて世界設定をひっくり返してなかったことにする、ところから始まります。まあ、ライトノベルならずともSFで考えればパラレルワールドものとかタイム・パラドックスものとして珍しくない展開です。にしても、本来であれば台風の目であり、全ての物語の始原であるところのハルヒをアッサリと退場させてしまい、語り部キョン君が右往左往する物語、というのは奇妙な、「本当に何でもありなんだなぁ」と感じさせるスタイルです。周囲が突然平凡なものになってしまった世界。TV版エヴァ最終回の「もうひとつの日常」というか、同人誌によるオマージュのような、というか、そんな「普通の世界」の真ん中に忽然と取り残された「普通じゃない世界」の住人。そのギャップが面白い。痛い。「ある日目覚めたら超常の世界に放り出されていた」パターンの正反対ともいえましょう。(正反対ゆえに、その異常性はある意味同じベクトルを持っています。)

キョン君が元の世界に戻る(いや、世界を元に戻す)ために四苦八苦し、(「普通」になっちゃった)いつものメンバーと邂逅するところは、もうちょっとしんみりしたりとか驚いたりしてもよさそうなモンですけど、いかんせんキョン君テンパってしまっているので、あまり深く心理描写にはまっていきません。んでまあ、ドタバタの末にご都合主義で−といういかにもライトノベルっぽい展開で話が進んで行く訳ですが、キョン君が「取り残された」ワケとか、救いの手がどういう理屈でやってきたかとか、その辺をもうちょっと深く掘り下げるとSFっポイ厚みが出てきたと思います。そもそも事象の発生原因もちょっと無理矢理っぽいかなー、という気もします。(その原因もかーなりこじつけっぽいですが。)他の話にて「特異点」扱いされているハルヒがあっさりと普通になっちゃってるところとかも違和感あります。まあ、そういった考証的な事を言い出すとキリがないですし、ライトノベルなんだからそこまで考えなくてもいいぢゃないか、という感じですか。自分はどちらかというと理屈っぽく考えしまうほうなので、ここまでこういう割り切り方をされるとむしろスカッとします。(これは褒めているんですよ?)

物語を全て語りきらずに余韻を残すあたりはいい感じですね。すっきりしながらも心地よい読後感に浸ることができましたよ。

投稿者 ogre : 2006年3月14日 20:50



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