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2006
03 10(金)

ペイル・コクーン

[ 銀幕是即異次元之扉:Movie&TV]

ペイル・コクーン/吉浦康裕
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ (2006/01/18)

公式サイト
公式サイトでは予告編も見れるので是非どうぞ!)

「ほしのこえ」以来、1人、あるいは少人数でフルCGの高水準なアニメーションが作られることは珍しいことではなくなってきていますが、この作品は中でも映像的な達成度が非常に高いように思います。

過去の記録が失われた世界、その中で過去の記録を発掘する「記録発掘局」に勤める主人公ウラ。光ある地上の風景を「発掘」するのと裏腹に、人々は地下へ地下へと降りていき、記録を発掘することにも興味を失ってしまう。取り戻せない記録を発掘することに意味はない、取り戻せない記録など知らなければ良かったのに、と。
そうするうちに彼は、一本の映像記録を発掘・復元するー。
というのが大まかなストーリー。

ただ、この作品の場合、そういう言葉で語られる以上に映像のもつ雰囲気を大事にしたいな、と。
暗い地下世界を透明感のある絵で描き、どこまでも沈んでいこうとする世界とそれに(静かに)逆らう主人公が浮かんできている感じがしてくる。CGアニメーション特有なダイナミックな(でも静かな)動きが所々に挟まれていて、クドくなく、印象的。特にクライマックスのコマ落としは、思わず画面に食い入るように魅入ってしまった。そしてラストの輝き。暗と輝の対比が鮮烈でした。AfterEffectバリバリ使ってます、という感じがしなくもありませんんが。(透過光や逆光の効果の多様が。)でもまあ、「地下」を舞台にした世界観で生きています。(ちょっと使いすぎな感じもしますが。)

近未来チックにもかかわらずアナクロな(大正時代か昭和30年代を彷彿とさせる)感じの舞台装置、BGMのみのシーン展開、一部のセリフ回しなどになどに押井守の影響が強く感じられました。(ここまで来ると、ある意味意識的に「盗んでいる」気がしますが。)コンピュータ(?)のI/Fが未来的でありながら現代的でもあったりするところも。
ところで、「本」が音声I/F(電話のようなもの)になっているのは「記録を失った」ことの暗喩であるように思えます。

「ほしのこえ」を初めて観たときのような、背筋が震えるものはありませんでした。でも最初に絵を観たときから「好きだ」と直感していました。(このあたりは以前のエントリーが証拠物件(笑))そして、映像中に降る雪(?)のように、じんわりと染み渡る、そんな感じです。

唯一難点を言えば、挿入歌がもうちょっと印象的であって欲しかったです。

Muss es sein?」さんは字幕版で観られることを勧めています。自分はまだ日本語版でしか観てないので、この後観てみようと思います。
渋谷では働くアヨハタブログ」さん、「よっしーの楽描き帳さん」は、特典の「もうひとつの発掘記録」に注目されています。これは、プラスアルファの面白さととるか蛇足ととるか、微妙な感じだと思います。自分は若干後者かな〜。SF考証的にはこれで補足されますし、外伝的なものとしてはいいかとは思います。

投稿者 ogre : 2006年3月10日 22:27



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