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2004
10 10(日)

稀人

[ 二次元的行間之隙間:Book]

稀人
久しぶりに、ホラーに手を伸ばしました。

カメラマンである主人公・増岡の独り語りによって物語が進んでいき、そのファインダーを通した世界の中に現実と幻想が入り交じってくると、読んでいる方も「おお、来たか、来たか」という感じになってくるモノがあります。

男が地下鉄の構内で「扉」を発見し、死んだはずの(なにしろその死を主人公自身が映像に焼き付けたはずの)人物との邂逅。舞台が現実なのか、幻想世界なのか、主人公の心証世界なのか、そのあたりが曖昧になってきて、読者の立ち位置がぐらぐらしてきたところへ・・・・なぜか秘教的・オカルト的な言及がたたき込まれてくる。おお!なんとも懐かしい感覚ではないですか。登場人物がナゼかマニアックなオカルト知識を持っていて「普通知らねぇよ!」みたいな会話が展開されていく、このパルプ・フィクション的な流れ。(また主人公もそれについて言って、「なんでンなこと知ってんだよ!」というツッコミの対象になります。)それまでが「現実と非現実」(あるいは正気と狂気)の微妙な境界を歩いていただけに、この崩れ方はかなり無茶です。(←褒め言葉。)

そして、いつしか増岡の目の前に広がる『狂気の山脈』
・・・・・あれ?

いんやー、まさか今になって「テケリ・リ!テケリ・リ!」という声を聞くとは思いませんでした。(←褒め言葉)
どうでもいいすけど、「テケリ・リ!テケリ・リ!」という声はショゴスの声であって、『この都市の創造者』であろう「古のもの」の声じゃありませんから。増岡サン、勉強不足ですよ。

さって、その後、現実世界への帰還、再び妄想とも現実ともつかない世界が展開されて・・と思ったら、やおらMIBやジョン・C・リリーのECCO説が引用されたりしてまた別の不気味な世界へ。主人公はちょっとしたデムパさんなのではないか、だとしたらそれを真面目に読んでるこっちの立場はどーなるんだよ、と作者に毒づきながら読み進めると・・・・

・・・・あれ?

最後は「稀人」F自身の独白で終わりですか・・・・?

うーみゅ、なんなんでしょ、この中途半端さは。

まあ、ホラーなんだからスッキリしてもしょうがないんですが、それにしても中途半端な構成ですな。この、力業でECCOとかネットワークとか持ち出すやり方は、なんとなく「serial experiments lain」を思い出すところがありますな・・と思ったら、この作者の小中千昭氏、lainの脚本の人でした(爆)。
あー、それでなんかデジャヴを感じたんですね。きっと、こういう無理矢理なノリがこの人のやり方なんでしょう。構成的に破綻しているような気がしますが、「ホラーだし!主人公デムパだし!」って事ですませちゃうんでしょうか、やっぱり。

ファインダー越しに見えていた現実と幻想の境目、そこを扉一枚でラヴクラフト世界に持ち込み、さらにUFOだなんだの話題にすり替える。うーむ、普通の読者は置き去り。(lainの時もそうだと思いますけど。)まあ、角川ホラー文庫をわざわざ買うんだからって、「普通の読者」は想定していないのか。

うーん、やっぱり映画も見たくなってしまいました。(←謎。)

投稿者 ogre : 2004年10月10日 17:49



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