08 15(日)
シドニー! コアラ純情編・ワラビー熱血編
[ 二次元的行間之隙間:Book]
書籍名:シドニー! コアラ純情編・ワラビー熱血編
著者名:村上春樹
出版社:文春文庫
わかりにくいんですが、コアラが前編でワラビーが後編です。
んで、つまりこれは、村上春樹によるシドニー・オリンピックの観戦日記です。
わかりやすいですね。
もうシドニーオリンピックから4年もたつのかと思うと恐ろしい感じがしますが、思い出そうとすると不思議に記憶もあいまいで、なるほど、それなりに時間がたったのだな、と実感するのであります。
さて、なんにおいて村上春樹サンってのは人と違う観点を持っているというか偏屈というか、まあ、そもそもスポーツジャーナリストではないわけで(ましてやプロのアスリートではないわけで)、そういう意味では「より一般的な視線」なのかもしれない、と思うところもある。いやいや、村上さんはニューヨークマラソンとか走ったりする猛者(?)だから、一般的視点とは言いがたいかもしれない。でも、プロのそれとは明らかに違う視点、それがこの本の面白さだろう。
村上さんが「Number」からの「仕事で」(これがまあよく強調されるんだ)シドニー・オリンピックを見に行って、オーストラリア大陸を丸一日ドライブしてみたりとかって相変わらずワイルドでヘンなことをしつつ、淡々とその工程を記録する。
ある事件がおきるまでは毎日書いたものを東京にメールしていたというから、それまでみたいに「とにかくテーブルを見つけたら手帳に書き付ける」訳ではないので、全体的に落ち着いているし、逆に言えば荒々しさ、旅の生々しさみたいなものはなくなっている。(「雨天炎天」と比べても仕方がないんだけど。)
序と末に、選手へのインタビューが入っている。シドニーオリンピックのはるか前と、直後に行ったものがそれぞれ。考えようによってはちょっとイヤラシイ。でも、それがオリンピックというものの「今の」ありようをとてもよく映している。村上さんが描写する、バカバカしくもすばらしいお祭り騒ぎ。そこを傍観者として、参加選手として、あるいは参加しなかった選手として通過するとどうなるのか。その対比が読後に「来ます」。最後の2章は、しっかりあごを引いて読んだほうがいいと思う。オリンピックが終わった後、ちゃんと現実の生活に戻るときのように。
投稿者 ogre : 2004年8月15日 00:00
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