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2009
02 12(木)

生物と無生物のあいだ:福岡 伸一

[ 二次元的行間之隙間:Book]

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
福岡 伸一
講談社
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もうさ、タイトルが「冷静と情熱の間」にインスパイア受けたんだ、って、言わなくてもわかるあたり、この作者が何を書きたかったのかなぁ、というが分かるような気がする。生物と無生物、という、生命とはなにか?を、叙情的に、ロマンチックに、書きたかったんだと思う。取りようによっては中二病だ(笑)。
だから、DNAの話やら細胞の話やらをしながら、その発見や栄光の影にある人間関係のドロドロとか「隠れた英雄」を物語り、遠心分離器の回転の中に叙事詩を詠むつもりだったんであろうけど、なんだか「普段は白衣を着た冴えない僕だけど、ニューヨークの雑踏を離れてボストンの静けさの中に佇んでいるところなんてちょっと俺ってカッコイイ」的なところがちょっと鼻につくのだ。
肝心の中身なんだが、最近話題のインフルエンザの話を交えながら、ウィルスやらDNAやらの話をしていく。そして狂牛病で話題になったプリオン。このあたりが、まあ、「生物と無生物のあいだ」にある話の限界だろう。まあ、DNAの話で生命を語るとなんだかドーキンスに行ってしまいそうなので、あえて避けたのかもしれない。でも、たんぱく質つながりから細胞小胞体、的な話に持っていくのは、「ええ、僕の専門へもってきました!」みたいな、どうやって合コンの会話を自分のフィールドへ持っていくか、的感じに思えてならない。
ここんところ、何冊か、専門家の人の一般向け新書を読んでいるんだけど、なんかだいたい方向性が似てきている。この本は、その中でも叙情的な語り口が(場面にもマッチして)ウケたのかもしれない。「一般向けになっている」という表現はあるかもしれないが、つまり、本筋以外のところが多い、ということにも他ならない。
文芸家がこの本を下敷きに小説を書いたとしたら、ドロドロの人間関係の中から生まれるドラマ、それに想いを馳せるうだつの上がらない研究者……みたいなことになったのかもしれない。でも本当は、語り部はいまや教授であるし、ドロドロの人間関係をやってた人たちはノーベル賞受賞者やそこに列する研究者であって、学会の人間が揶揄するわけにもいかないであろうなぁ、と、同情はするのである。

投稿者 ogre : 2009年2月12日 22:36



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