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02 19(月)
へうげもの(1)〜(4)(以下続刊):山田芳裕
[ 二次元的行間之隙間:Book]
講談社 山田 芳裕(著) 発売日:2005-12-22 | 講談社 山田 芳裕(著) 発売日:2006-04-21 | ||
講談社 山田 芳裕(著) 発売日:2006-08-23 | 講談社 山田 芳裕(著) 発売日:2007-01-23 | ||
Amazy |
「へうげもの」と書いて読みは「ひょうげもの」(歴史的仮名遣い)。戦国〜安土桃山〜江戸初期の武人・大名・茶人として有名な古田織部の半生を追った作品だ。古田織部(当初は古田左介)が、武と数寄の狭間で身悶えしながら生き、千利休に師事してわびの世界を学んでいく。古今東西の名物が織りなす時代絵巻も美しいが、200石取りの30代からはじまり、4巻では秀吉に仕える大名にまで成り上がる(そしてこの後には天下の茶頭が決まっている)サクセス・ストーリーとして見ても面白いだろう(もっとも、なんだか成りゆきで成り上がっているのでサクセスの役には立たない)。
山田芳裕氏の絵は、キャラクターの表情にかなり変化をつけ(時としてデフォルメし)、極端な遠近法を多用して人間や場面の大きさを作り出す。好き嫌いが分かれるタイプの絵柄だと思う。前作の野球マンガ「ジャイアント」もモーニング連載だったが、自分は途中までどうも好きになれなかった。途中から大丈夫になったのは、舞台がメジャーリーグになり、その「でかく見せる」見せ方と舞台の大きさが一致してきたからではないだろうか、と思っている。本作「へうげもの」では、ただ大きく見せるだけではなく、時には矮小に、時には哀しみをたたえ、ある時は恐ろしいまでの冷酷さをキッチリ浮かび上がらせる技として活かされている。作中で使われる「ドバァッとした感じ」やら「ズドッキュとした迫力」といった表現、「ホヒョンとした」雰囲気などを、絵でもうまく伝えている。台詞や書き文字に頼って「雰囲気」を出そうとしている作家が多い中、これらにほとんど頼らない山田氏の表現力はすごい。
このマンガのもう一つの魅力は、その大胆な歴史解釈にある。現在、物語は秀吉の天下統一寸前のところまで来ているが、織田信長、明智光秀、千宋易(利休)といったおなじみの人物が、思いもよらないドラマを見せている。特に本能寺の変に至るまでの過程は、教科書が教える歴史とは違うが、しかし、「実はこうだったのかも……」という説得力を持っている。SFにおけるセンス・オブ・ワンダーのような、自由な発想が面白い。
もうひとつ、これはお遊びの部類に入るのだが、ときおり、登場人物が実在の人物のパロディになっていることがある。大名・細川藤孝は、元首相の細川氏に似ている(祖先だし)。虎好き・加藤清正は、なぜかアフロで「ちょっちゅね」と口にする。このキャスティングは謎だ(笑)
何はともあれ、作品自体が数寄の心に溢れたこの作品、オススメだ。まあ、読んでも目利きにはなれないのでその気になってはいけない(笑)
投稿者 ogre : 2007年2月19日 23:10
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