« 展開と対応と(当世広告気質)|メイン|えのトリえの素トリビュート:榎本 俊二 »

2006
10 23(月)

恋する放課後♪:川上史津子

[ 二次元的行間之隙間:Book]

恋する放課後
恋する放課後
posted with amazlet on 06.10.23
川上 史津子
幻冬舎

タイトルはやっぱり「恋する惑星」のオマージュなのかな。あのあたりの台湾映画は自分もとても好きだ。個人的には「天使の涙」が一番好きだけど(関係ありませんかそうですか)。

えー、それはともかく。
携帯サイトで連載された、ハイティーンをターゲットとした小説だと言うことだが、どうしてなかなか良質だと思う。相手に合わせた、という言い方は失礼かもしれないが、文体に堅っ苦しいところはなく、難解な表現を避けたいわば口語的な表現でつづられた物語は、ストレートに伝わってくる分文意に即していると思える。おそらくはテクニックとして意識しているのだと思う。

一編は短い物語が、登場する人物によって連鎖して綴られていく。少年、少女、大人、親、子ども。様々な視点をその表現方法(文体とか)を駆使して描いていくのは見事だ。何気なく読んでいると連載ではなくリレー小説かと思うくらいだ。ただまあ、同じようにして長編を書くことは出来ないと思う。日記、あるいはほんの数十分のつぶやきの連鎖。この物語にはそれで十分だし、必要な効果を確実に提供している。
各登場人物が語ることは個々に見ればさして特別なことではない。各自が属する領域、生きている時間に対して素直な語りが繰り広げられるだけだ。日記風であったり対話であったり電話であったり、語り口もいろいろだ。そういう書き方そのものだって、今に始まったことはない。が、その面白さを再認識させてくれるだけの何かがある。もっとも、若い子にこれを読ませたところでバカにされるだけかもしれない。甘酸っぱい時期をとっくに通り過ぎた年代であるからこそ楽しめるのかもしれない。実のところ、マセガキには谷崎潤一郎とか読ませた方が面白そうだ(なにがだ(笑))。

どうでもいいが、帯に「ちょっとHな物語」とか書いてあるが、この程度を「H」呼ばわりしていたらティーン向け少女コミック誌の半分ぐらいは成人指定しないといけない。釣り書きに期待してはいけないのはあたりまえだが、編集者が本気でそう思っているとしたら、最近の十代に対する見方を改めた方が今後のキャリアにとってプラスになると思う(笑)

…なんでこんなガキ向けの本を買ったかって?
んー、気の迷いとしか(笑)。でもそうやって買った本が面白いんだから、Amazonがあっても本屋巡りは止められないのですよ。

投稿者 ogre : 2006年10月23日 22:19



トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.the5thdimension.jp/cgi-bin/mt/mt-my-mod_12_track_back_ogre.cgi/705

コメントする