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08 30(水)
虚空の逆マトリクス
[ 二次元的行間之隙間:Book]
講談社 (2006/07/12)
森氏の第四短編集(らしい)。この短編集は特に、S&Mシリーズの犀川&萌絵が出ている「いつ入れ替わった?」が楽しみで購入した(もっとも、そうでなくても購入したと思うが)。そして、その期待はいい意味で裏切られることになった。つまり、その他の短編もとにかく秀逸だということだ。
中でも圧巻なのが「ゲームの国」。本筋とは何の関係もなく「回文同好会」が登場し(いや、殺人事件がわき道で、回文同好会が本筋か)、とにかく長短入り乱れたありとあらゆる回文が提示される。これを全部森氏が考えたものなのだろうか。氏の脳味噌がどうなっているのか一度見てみたいと思ってしまう。回文なんて考えるだけでも大変なのに、意味を持たせた上、それを言っているキャラクターの性格までにじませてしまうなんて・・・。そのすさまじさはぜひ立ち読みでもいいから確認していただき、そして、気に入ったら購入してじっくり読んでみてほしい。
もちろん犀川&萌絵の物語も素敵だ。この二人(特に犀川)は一種のモンスターとして描かれながらも決して人間性を失っていない。犀川が見せる不器用がニンマリとさせてくれる。萌絵の、漫画のお嬢様風に押しが強いようでやっぱりくじけちゃう(結局最後は強引なのだが)ところとか大好き。作者は時系列とかあまり考えてはいないのかもしれないけど、この二人が再度登場するGシリーズ(の文庫化)が今から楽しみだ。
同じ作者によるものかと思うほど様々な意趣に溢れる短編集。ものによってはお気に召さないものがあるかもしれないが、逆に言うとどこかに気の合うものがあると思う。歴代のファンならずとも森博嗣入門編として(これに限らず)短編集はいいかもしれない。
投稿者 ogre : 2006年8月30日 23:47
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